マッチングアプリ業界では近年、マルチブランド化を選択する運営会社が増えている。
これは、1社が複数のマッチングアプリを運営し、単一アプリでは実現しづらいポートフォリオ経営を行う戦略だ。
市場の成熟とともにユーザーのニーズが細分化する中、この動きは必然とも言える。
単一アプリではユーザーを満足させきれない
マッチングアプリ黎明期は、
「1つのアプリで幅広い層を獲得する」
という戦略でも成長が可能だった。
しかし現在は、
・恋活/婚活
・ライトな出会い/真剣交際
・20代向け/30代以上向け
など、目的やライフステージごとに求められる体験が大きく異なる。
1つのアプリで全方位をカバーしようとすると、コンセプトが曖昧になりやすいという課題が生じる。
マルチブランド=ポートフォリオ経営
そこで選ばれているのが、マルチブランドによるポートフォリオ経営だ。
複数のアプリを持つことで、
- ブランドごとに明確なターゲット設定ができる
- 特定層に深く刺さる設計が可能になる
- 市場変化への耐性が高まる
といったメリットが生まれる。
「1つの巨大アプリ」よりも、「複数の尖ったアプリ」を持つ方が、結果的に市場全体を押さえやすい。
データとノウハウを横断的に活用できる強み
マルチブランド化のもう一つの大きな利点が、データ・ノウハウの共有だ。
複数アプリを運営することで、
- マーケティング施策の最適化
- マッチングアルゴリズムの改善
- 課金導線やUX設計の知見蓄積
といった資産を横断的に活用できる。
これは、新規ブランド立ち上げ時の成功確率を高める要因にもなる。
タップル社とアイザック社のマルチブランド展開
実際に、国内でもマルチブランド化を進める企業が増えている。
タップル社は、
- 若年層向けの総合恋活アプリ「タップル」
- 価値観や相性にフォーカスした「Koigram(コイグラム)」
という2つのブランドを展開している。
一方、アイザック社も、
- ハイスペック志向の「ゴージャス」
- 再恋・大人世代を意識した「ラス恋」
と、明確にコンセプトの異なる2ブランドを運営している。
いずれも、「1ブランドで無理に広げない」設計が特徴的だ。
ブランドを分けることで世界観が保たれる
マルチブランド化の本質は、単なる数の増加ではない。
重要なのは、世界観を壊さずに最適化できることだ。
UI、コピー、料金体系、ユーザー層——
これらをブランド単位で設計することで、ユーザーは
「このアプリは自分向けだ」
と直感的に理解できる。
今後は「複数の勝ち筋」を持つ企業が強くなる
マッチングアプリ市場が成熟期に入った今、
単一アプリに依存するビジネスモデルはリスクが高まりつつある。
今後は、
- 明確に役割分担された複数ブランド
- データを活かした横断的運営
を実現できる企業が、より安定した成長を遂げていくだろう。
マルチブランド化は、マッチングアプリ業界において一時的なトレンドではなく、構造的な進化だと言える。








