話を聞いたのは…
株式会社トゥエンティトゥ 代表取締役CEO
鈴木 悠史(Yushi Suzuki)
1995年生まれ。2017年に早稲田大学法学部を卒業後、博報堂DYデジタル(現Hakuhodo DY ONE)に入社。2023年1月に合コンマッチングサービス「コンパイキタイ」の開発・運営を行う株式会社トゥエンティトゥを設立。
株式会社トゥエンティトゥという会社名に込められた思い
本日は、合コンマッチングアプリ「コンパイキタイ」の開発・運営を行っている株式会社トゥエンティトゥの鈴木さんにお話をお伺いします。
鈴木さん、よろしくお願いします。
株式会社トゥエンティトゥの代表取締役CEO 鈴木悠史です。本日はよろしくお願いします。
まず気になったのが、「トゥエンティトゥ」という会社の名前です。
この名前には、どのような意味があるのでしょうか?
弊社のミッション(企業が果たすべき使命・存在意義を表す言葉)は「22世紀に近づける」です。
今私たちが生きている世界は、あらゆることが物凄いスピードで進んでいます。
しかし、中にはテクノロジーがまだ及んでいない領域もあり、そこでは「もうどうにもならない」という停滞感が漂っています。
私たちの使命は、テクノロジーの力で、70年以上先の未来を少しでも近づけることだと思っています。
未来は豊かであると信じて、22世紀に少しでも近づけることで多くの人の生活を豊かにしていこうと思っています。
会社のホームページに「We Create Market」と大きく書かれていました。これも「22世紀に近づける」というミッションに関係しているのでしょうか?
企業が果たすべき使命・存在意義を表す言葉としてミッションがあるのに対して、企業の中長期的な目標を表す言葉としてビジョンがあります。
弊社のビジョンは「市場創造」ですので、トップページにも「We Create Market」と書いています。
私たちは、生活者のニーズが既にあり、多くの会社が既にいる市場に参入することはしません。
私たちが行うのは、生活者の潜在的なニーズ発掘して、新しいプロダクトを生み出すことです。
そして、そのプロダクトによって新しい価値を生活者に提供して、新たな需要を生み出しこれまでにない市場を創り出すことです。
「市場を創造すること」こそが、「22世紀を近づける」ために必要なことだと確信しています。
その新しいプロダクトとして初めて作られたのが、合コンマッチングサービス「コンパイキタイ」なのですね。
はい、おっしゃる通りです。
「コンパイキタイ」はなぜ作られたのか
「コンパイキタイ」とはどのようなサービスなのか教えて下さい。
合コンマッチングアプリ「コンパイキタイ」は合コンしたい男性幹事と女性幹事のマッチングを行うサービスです。
1対1ではなく複数人での飲み会が好きな方や、マッチングアプリを使うのに疲れてしまった方に多くご利用いただいています。
「コンパイキタイ」を開発しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
私自身がマッチングアプリを使っていて、違和感を感じたのがきっかけでした。
通常マッチングアプリでは、多くの人にいいねを送ることからスタートしますよね。そして、いいねが返ってきてマッチした後に、メッセージを送って数ラリーのやり取りが発生します。そして、どこかのタイミングで「一度お会いしませんか?」と切り出して、実際に会うことになりますよね。
はい、ほとんどのアプリがそのようになっています。
でも、会ってみたら「なんかチャットと違って意外と喋らないんだな」とか「ちょっと写真と違うな」とかがあるわけじゃないですか。そんなことを繰り返すと、だんだんと出会うのが面倒になってくるんです。
それはいわゆる、「マッチングアプリ疲れ」と言われるものですね?
そうです。
他にもマッチングアプリ疲れに該当するものとして、結婚などを意識しすぎるあまり質問をしすぎてしまい、面接のようになってくるということも挙げられます。結果的に、そんな自分が嫌になってしまい、出会いから遠のいてしまうんです。
なるほど。鈴木さんは、そんなマッチングアプリ疲れを感じて、「コンパイキタイ」を立ち上げようとなったということでしょうか?
はい、疲れることをなく、楽しく使えるマッチングアプリを自分の手で作ろうと思いました。
そして、マッチングアプリを使う前に行っていた「合コン」が楽しかったという思いもありました。
合コンが楽しいと思われる一番の理由はなんでしょうか?
私が思ったのは、「マッチングアプリは減点評価」で「合コンは加点評価」というものです。
マッチングアプリの場合は、相手の情報が詳細に書かれていますよね。
年齢、身長、職業、趣味だけならまだいいものの、大学名や年収や体型(痩せているか筋肉質かなど)など、「それ書かなくちゃいけないの?」と疑問に思うような項目が多くあります。
様々な情報を知っていることで、会う相手を絞りやすくするという目的だと思います。
その目的は分かるんですが、実際に会ってみると書いている情報とちょっと違うのでは?と思うこともありますよね。
そうなった場合に、「マラソンが好きって聞いてたからスポーティーなのをイメージしていたけどちょっと違うかな」とか「意外とマッチョでタイプじゃなかった」とか思う人もいると思いました。
情報が多い分だけ、ちょっとイメージと違った時に減点をしてしまいがちなんです。
見るポイントが多いということが、減点評価の理由ですね。合コンの場合は、そうではないと。
合コンの場合は、情報がそれほど多くない場合がほとんどです。
そのため、フラットにその場にいる異性に向き合うことができると思います。
意外性のあることを言われたとしても「ギャップがあっていいね」と前向きに受け止めてもらえるようになります。
合コンは情報が多くないからこそ、相手のことをイチから知ることができ、評価をどんどん積み上げていくという加点評価なのだと気がつきました。
マッチングアプリの場合はすでに知っている状態から始まるので減点評価なのに対して、知らない状態から始まる合コンは加点評価ということですね。
はいそうです。マッチング疲れを感じて、それを解決する鍵となるのが「合コン」だったんです。
マッチングアプリの要素と合コンの要素を合わせたサービスを作ろうというのは、その時に決めました。
きっかけは1冊の本だった
「合コンアプリを作る」というのは大きな決断だったと思いますが、踏み切ったきっかけなどはあるのでしょうか?
一冊の本に出会ったことです。「謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦」という本で、BUYMAというサービスを作った須田将啓さん、田中禎人さんというお2人の起業物語なのですが、その中に合コンマッチングサービスが出てくるんですよ。
「コンパイキタイ」の前に、合コンマッチングサービスが存在したんですね。
はい、しかもそのサービスには「どんな合コンだったのかの口コミを書く機能があった」とされていて、この発想はすごく面白いと思いました。学校に校風があるのと同じように、会社にも社風があります。その会社の中にいる人は、その会社の社風と似ている人が集まると思います。
私は、誰もが異性に会う時には仮説を立てていると思っているんです。
例えば、相手が銀行員であれば「真面目な人なのかな」と考えるでしょうし、エンタメ業界であれば「派手な人なのかな」と考えますよね。
そして、実際に会ってみて「銀行員で真面目な人かと思っていたけど、冗談を多く言う人で話しやすかった」と答え合わせをしているのです。
もちろん、この仮説を立てて答え合わせをするという作業は、無意識にやっていることだと思います。
なるほど、確かに相手が男性であればその人の雰囲気に合わせて着る洋服やメイクなどを変えることがあるかもしれないです。
はい、そしてその「仮説を立てて答え合わせ」というものが、会社名でもできたら面白いと思いました。
こうして、職業・業界だけではなく会社名で登録ができるマッチングアプリの開発を始めました。
開発の中で特に大変だったのは、どの部分ですか?
最も大変だったのは決済周りです。
私たちはまず、サービスが公開されていない中で決済代行会社と話し合いを行いました。
ただ、何百社と取引がある決済代行会社に対して、私たちは創業1年も経っていないスタートアップです。
開発中の画面を見せても、「どんなサービスなのか分からない」と言われてしまい、なかなか契約をすることができませんでした。
最終的には決済システムの導入はできたんですよね?
はい、運良く話を聞いていただく決済代行会社さんが見つかって、決済システムを導入することができました。
結局決済周りで3ヶ月ぐらいはかけていたと思います。
サービスのリリースは2023年12月だったと思うのですがこの時期にした理由などはありますか?
いえ、たまたまです。
2023年中にはリリースをしたいと様々な方とお話をしていたのですが、2023年11月にはデバックチェックができるまで開発が進んでいたので、クリスマスなどがあり恋愛の意識が高まる12月のタイミングでリリースをしようと決めました。
できたのはどんなサービスだった?
合コンをヒントに、マッチングアプリ疲れを解決するサービスを作ったとお伺いしました。
ご自身が思い描いたようなサービスにはなったのでしょうか?
はい、自分の考えを形にできたと感じています。
特にこだわったのはどの部分ですか?
情報をどこまで出すかという部分です。
「相手を探すために絶対に必要な情報」と「あったほうがいいけど絶対必要ではない情報」のバランスにこだわりました。
コンパイキタイは、「名刺」というのがデザインのコンセプトになっています。
名刺は横長のスペースと決まっているので、全ての情報をその中に載せることはできません。
そのため、名刺の中に載せる個人の情報は年齢、プロフィール画像、職業など最小限にして、プロフィール文などはクリックをした時に見れるような形にしました。
最初に目にする部分から「あったほうがいいけど絶対必要ではない情報」を無くすことで、情報量を意図的に少なくして、ユーザーがアクションをするかしないか決めるのを容易にしています。
確かに、マッチングアプリは情報量が多すぎて見るのが面倒になることはありますね。
直接的ではないにせよ、「見るのが面倒」というのも、マッチングアプリ疲れに繋がっているように感じています。
コンパイキタイはマッチングアプリ疲れを解消したいという気持ちから生まれたサービスですので、様々な部分で「疲れを感じない、作業のように感じさせない」という設計をしています。
コンパイキタイが最終的に目指すもの
コンパイキタイはどんなサービスにしていきたいと思っていますか?
目標などがあれば教えてください。
コンパイキタイの目標は、できるだけ多くのユーザーに使ってもらう「合コンのプラットフォーム」になることです。
複数人でのマッチングという市場は今はまだ小さいですが、今後成長を遂げていくにつれて活性化されると思っています。
機能改善・飲食店予約などの機能追加を行なっていき、ユーザーにストレスなく使っていただけるようにしていこうと思います。
それでは、株式会社トゥエンティトゥの目標は何でしょうか?
会社を上場させることが目標です。
会社名を、メイン事業である「コンパイキタイ」にしなかったのは、複数の事業を行う会社にしたかったからです。
「市場創造」というビジョンを掲げているので、自社のプロダクトを通じて多くの市場を創造していき、同時に会社としても成長をしていけたらと思っていきます。
社会にインパクトを与えるプロダクトを作るためには、数多くの優秀な人材が必要不可欠です。
そうなるとどうしても多額の資金が必要になりますので、中間地点では上場して株式市場から資金調達をする必要があるのではないかと思っています。
ありがとうございました。
後半では、起業前の鈴木さんの事についてお伺いしていければと思います。